矯正ブログ

2021年8月20日 金曜日

抜歯する場合としない場合

矯正治療における抜歯、非抜歯の基準とは?
「矯正をしたい」と思ったらまず、インターネットで矯正治療について調べる方が大半だと思います。そして大人の方の矯正の中で特に抜歯がするかどうかという点を気にされる方は少なくありません。

しかしインターネットで調べていくと「抜かない矯正治療」や「非抜歯矯正」というホームページがあると思ったら、逆に抜歯をせずに矯正をするとゴリラ顔になるとか、口が閉まらなくなるリスクがあるという情報も出てきてしまうことがあり混乱している方もいらっしゃるかと思います。

矯正治療で抜歯する時としない時があるのはなぜか?
矯正相談をした時に、抜歯が必要と言われた方の中で、どうして抜歯が必要なのかをしっかりと説明されたことがありますか?

矯正治療で抜歯をする必要性がある場合は主に4つあります。

1.デコボコを解消するためのスペースの確保
2.上下歯列の咬み合わせのズレを補正するため
3.前歯の角度や位置を改善するため
4.口元の突出を改善して綺麗な横顔にするため

上記は相互に関係するため個別で抜歯、非抜歯と判断はできないのですが、この4つの問題を抜歯以外の方法で解決できるのであれば非抜歯での矯正が可能になり、出来なければ抜歯での矯正となります。

つまり矯正治療における抜歯、非抜歯を決定する4つの基準は
①デコボコの量
②上下歯列の前後的咬み合わせのズレの量
③前歯の角度が適正範囲からどの程度は外れているのか
④口元の突出の程度
となります。

デコボコの量
「歯が大きく、顎が小さいため抜歯をする必要があります。」
これは矯正治療で抜歯が必要になる際の説明で最も話されることです。
デコボコが大きく、ガタガタしている歯並びを治療するためには、歯をきれいに並べるためのスペースが必要になってくるためです。

しかし、「デコボコが大きい」=「抜歯が必要」ということではありません。実際にデコボコを解消するためのスペースを作るための方法の中で、抜歯は最も簡単で効率的な方法ですが、スペースを作る方法はそれ以外にも複数あります。どのくらいスペースを作ることができるかは個人差がありますが、複数の方法を組み合わせることで歯を綺麗に並べるスペースを作っていくことも可能です。

デコボコを解消するためのスペースを作る方法
抜歯
矯正治療で抜歯をする場合は、犬歯の後ろにある小臼歯を抜くことが一般的です。上下左右のバランスをとるために計4本抜くことが多いのですが、上顎だけ2本や下顎だけ2本を抜くケースもあります。

小臼歯は7mm~8mmありますので2本抜くと確実に14mm~16mmの隙間を作ることが可能になるのです。

デコボコがひどい方でも歯を並べるために必要なスペースが14mm以上という人は少数であるため、スペースの確保が確実にできるという点から抜歯されます。

歯列の側方拡大
歯列を横に拡げてスペースを作る方法です。ただし、骨の成長が終わっている大人の方の場合は、歯列が横に拡がるだけで骨は広がりません。現在の歯列が内側に倒れてこんでいる方は、大きく拡大できる可能性がありますが、歯列が外側に倒れてる方、骨が薄い方は拡大することができません。そのような方が無理に拡大しようとすると骨から歯根が飛び出てしまい、歯肉が下がり後戻りの原因になります。

どの程度スペースを作ることができるかは個人差がありますが、側方拡大1mmにつき0.7mmのスペースを作れるとされています。ただし日本人の場合は拡大可能量が小さく、デコボコの量も大きいため側方拡大単独でのスペースの確保は難しいと言えます。

奥歯を後方に移動
奥歯を後ろに動かすことで歯を並べるスペースを作る方法です。インプラントアンカーという歯槽骨に小さなネジを埋め込むことで、そのネジを固定源にして歯を動かす方法が確立されてから急激に使われるようになりました。従来は奥歯を後方に移動する際の歯のコントロールが難しいかったのですが、ドイツで開発されたベネフィットシステムという装置が日本で認可されてからは、非常に効果的に奥歯を後方移動することができるようになりました。

理論上ではいくらでも後方移動できるのですが、当然、限界が存在します。後方に移動できる量は奥歯の後ろにどれだけの骨があるかによって変わります。そのため、この方法をとる場合は、事前にセファロレントゲンやCTで後方の移動可能量を測る必要があります。

しかし日本人は、短頭型で頭蓋骨の前後径が短いため、奥歯の後方の骨に奥行きがないため2~3mmの後方移動が限界という方がほとんどです。稀に5mm以上後方の骨がある方もいますが、多くの方はこの方法単独で抜歯矯正と同程度のスペースを作ることは困難です。

前歯を前方に移動
前歯を前方に移動することでスペースを作る方法もありますが、この方法は前歯が内側に倒れているような特殊なケース以外では使用されません。

歯を削る(ストリッピング)
ストリッピングは歯の横側をそれぞれ片面0.25mm以内、両面合わせて1本当たり0.5mm以内で削ることでスペースを作る方法です。

歯と歯の間を削っていくので全ての歯に行うと理論上は13か所で6.5mmのスペースを作ることができる計算です。

上下歯列の咬み合わせのズレの補正
出っ歯や反対咬合のように上下歯列に咬み合わせのズレがある方は抜歯が必要になる場合があります。出っ歯の一般的な治療法としては上顎前歯を後方に動かすことで歯を並べるのですが、この上顎前歯を後方に移動するためのスペースが必要です。そのスペースを作るために上顎小臼歯を抜歯してスペースを作ります。

また、反対咬合の場合では下の奥歯の後ろに骨の余裕があれば非抜歯で治療できる可能性があります。ただし、反対咬合の場合は下顎前歯を後方に動かすと、下の前歯が後ろに倒れすぎてしまい歯根が骨から出ることがあります。重度の場合では矯正治療単独ではしゃくれた横顔が治らないため、外科矯正という手術を併用した治療を選択することもあります。

上下前歯の角度は適切か?
歯並びが悪くないのに上下の前歯だけ突き出している、上の前歯だけ前に反り返っているということがあります。

このような歯並びの方は笑った時の見た目を気にして矯正を希望されるのですが、実は見た目だけでなく、歯並びの安定性や歯の健康寿命にも関わってきます。そのため、治療計画を立てる際は上下の前歯の角度や位置が適切かどうか、また適切でない場合は前歯をどこに動かすかを考えて全体の計画を立てる必要があります。

このような歯並びの場合は、大きなスペースを作る必要性はなく、一見抜歯は必要ないように思えが、深く考えることなく単純に並べてしまうと著しく前傾している上顎前歯の角度の改善ができません。そのため、下顎前歯が上顎前歯を突き上げることになり、将来的に健康な歯列を保てなくなるリスクがあります。

口元の突出具合
出っ歯がコンプレックスの方の大半は、出っ歯よりも突き出した口元を改善したい、綺麗な横顔になりたいと希望されます。突き出した口元は見た目の問題だけでなく口唇閉鎖不全や口呼吸にもつながるため治療計画を立てる上で重視しなければいけない項目の一つになります。

口元の突き出しを改善するには前歯を後ろに移動させる必要があります。移動させる量が大きい程口元を大きく引っ込めることができます。前歯をどの程度後ろに動かす必要があるのかが決まるとそれに必要なスペースが決まります。そのスペースを非抜歯で作ることができれば非抜歯矯正が可能になります。著しく口元が突き出しており、口唇閉鎖ができない方は抜歯矯正になることが多いと考えていただいた方がよいでしょう。

投稿者 ホーカベ歯科クリニック

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